My Favourite DJはResident Advisorの連載企画で、そのコンセプトは「自分の好きなDJについてDJに語ってもらう」というシンプルなもの。新しい才能、ビッグネーム、ローカルDJなど、どんなDJでも構わないというオープンなスタイルを設け、彼らから幅広い回答を得ようとする企画だ。今回はアメリカ出身のDJたちに焦点を当て、各自お気に入りのDJについて語ってもらう。今回は世界各地で活躍するDJ6人にベストDJを挙げてもらった。

Ben UFO: Bruk collectiveから大きな影響を受けた

数週間前にこの特集へ参加することを決めて、じゃあ素晴らしいDJとは何かということについて少し色々書いてみようと思っていたけれど、結局やめることにした。それで、ここ数年よく聴いているセットを色々思い浮かべてみたけれど、どれもどうも違うということになった。というのは、僕が聴いているセットは、クラブで体験するセットとはかけ離れてしまっているからなんだ。僕が聴いているセットは別の時代のドキュメント的な作品か、綺麗なスタジオでレコーディングされたもので、言い換えれば凄く人工的な要素が入り込んでしまっている。この記事で僕が触れているSpencer Kincyのミックスはテープに録音されているから音質が酷い。これはレコーディングがミックスに影響を与えてしまっている、つまり人工的な要素が入ってしまっている良い例だと思う。

そういうわけで、今回僕はBruk Collectiveを選んだ。彼らのプレイは何回か聴いたことがあるけれど、いつも僕は彼らのセットにのめり込むことが出来たし、彼らはいつでも特別なプレイをしてくれるからね。あとは彼らから沢山の音楽を学んだし、決して理解できないような世界全体の複雑さに自分の目を向けさせてくれた。そういう意味で僕のDJに大きな影響を与えてくれたんだ。彼らのプレイによって、ありとあらゆる音楽の個性が導き出される。これが出来るDJの数は少ないと思う。新しい音楽に出会うために彼らのラジオ番組は良く聴いているよ。個人的に知っている人が自分に一番大きな影響を与えたというのは、分かりやすい話だね。

RP Boo: DJ Deeonのプレイは踊らずにはいられない

俺の中のベストDJはシカゴのDance Mania Recordsが産んだDJ Deeon（Deeon Boyd）だね。彼のセットは実際に彼と知り合う前から聴いていたけれど、彼の“House-O-Matic”は本当に印象深いトラックなんだ。というのは、タイトルはシカゴのダンスグループに由来しているからね。House-O-Maticsはサウスサイドのダンスグループで、フットワークの元となった存在なのさ。

彼の存在を知って何年か経った後、直接彼と会う機会に恵まれたけれど、彼は心の底から楽しんでプレイをしていたね。彼のプレイを間近で見て思ったのは、彼の生み出すグルーヴを聴いたら踊らずにはいられないってことさ。彼は自分の音楽でとにかく人を踊らせようとベストを尽くすDJだし、俺も彼のセットを聴くと、いつだってフロアで自分をアピールするというシカゴスタイルのダンスにハマることになる。彼のDJを聴ける日はDJとして最高の休日に値するってことだね。

Franck Roger: Joe Claussellのスピリチュアルなプレイを尊敬

15年程DJをやってきて、レジデントを務めるパリのパーティーを始め、世界各地で様々なDJと共演する機会に恵まれた。どういう音楽であろうと、そしてどんなテクノロジーを使っていようと、僕にとって素晴らしいDJとは、クラウドを楽しませることができて、また100％プレイに集中してその場のエネルギーをクラウドとシェアできるDJだと思う。Joe Claussellはその中の1人だね。彼のDJはテクノであろうとハウスであろうとスピリチャルな部分が前面に来る。あとEQの使い方や、プレイするすべてのトラックに対するエディットの仕方は魔法みたいだね。彼と一緒にDJブースにいると、コスミックなエネルギーとパワーを感じることが出来る。Joe Claussellは最高だよ！

For George FitzGerald: San SodaのDJは楽しいだけではなく、勉強にもなる

たまに「ベストDJは誰か？」って現場で訊かれるけれど、短い言葉にはまとめられない。長年に渡って僕に最高の時間を与えてくれたDJを挙げろという話ならば、多分DJ EZを挙げるだろうな。でもこれは若い頃の思い出というか、ノスタルジックな意味で選んでいるにすぎないんだ。

だから最近一番気に入っているという意味では友人のSan Sodaになるだろうね。San SodaはオールドスクールなアプローチのDJなんだ。アナログ信奉者で、ハウスのハードディガーだね。でも同じスタイルのDJにたまに感じるような鬱陶しい部分が彼にはない。彼は他のDJとは違ってアナログレコードをミックスが下手なことの言い訳にしないし、自分の世界にのめり込んでやりたい放題やってしまうこともない。素晴らしいスキルと遊び心を兼ね備えていて、楽しめると同時に勉強にもなる。彼のようなDJの数は少ないよ。僕の知っている限り、Panorama Barのような難しい場所で彼のようにプレイができるのはDVS1位じゃないかな。

Nicole Moudaber: Anja Schneiderのダンスミュージックに対する包括的なアプローチを尊敬

沢山のDJにインスパイアされてきたから、1人を選ぶのは難しいわね。私は基本的にUSハウスを聴いて育ったから、音楽そしてテクニックの両面からDanny Tenagliaから大きな影響を受けているのは間違いないけれど、今手放しで素晴らしいと言えるDJはAnja Schneiderだと思うわ。

彼女は素晴らしいアーティストであると同時に、ビジネスの才能にも長けているの。私は彼女がプロデュースしたレコードはすべて持っているわ。彼女の感性とハートは彼女が生み出す音楽に表現されていて、そのグルーヴとファンクはリスナーを裏切らないわね。そして彼女にはSebo KやPan Potなど、他のアーティストを育てたという実績もあるわ。彼女のDJは何回も聴いたことがあるけれど、クラウドを掴む能力は素晴らしいと思う。自分のトラックを彼女のレーベルLeena Musicからリリースできて本当にラッキーだったわ。この先Mobileeからリリースする話もあるのよ。

Rødhåd: Ben Klock'sのマシンのようなミックスと幅広い選曲は絶品

自分にとって最高のDJを選ぶなんて今回が初めてだよ。もちろん、俺の周りには素晴らしいDJが沢山いるけれどね（友人のAlex Do、Felix K、そしてDon Williamsは常に選曲とスキルで俺を驚かせてくれる）。俺がクラブに遊びに行くようになったのは90年代後半から00年代初頭の頃で、初めて聴いたDJはChris LiebingやAdam Beyerといったアーティストだった。テクノをツールとして捉える彼らのプレイは凄く好きだった。でもその後でテクノはそういう直線的な4つ打ち以上のことが表現できるフォーマットだということに気が付いたんだ。初めてBerghainに行ってレジデントのプレイを聴いた時、そこに目覚めたのさ。

Marcel Dettmannのセットは大好きだけれど、DJとして頭ひとつ抜けているのはBen Klockだと思う。クラシックと新しいトラックを巧みに組み合わせながら、誰も知らないような、とっておきの1枚を突っ込んでくるスタイルは最高だ。ジャンルを楽々とまたいでプレイする感じも気に入っているよ。テクノ一色の夜にハウスやメロディックなトラックを放り込んでくるからね。彼のミックスはマシンのようで、何時間にも渡ってフロアのテンションをキープできる。あと、今回はDJスキルについて書くべきなんだろうが、彼のトラックも本当に素晴らしいと思っているし、とんでもないスケジュールをこなしているのに常にリラックスしていて仕事に対してプロフェッショナルな彼の人間性も尊敬に値するね。だからたった5分の立ち話でも彼と会えるのを楽しみにしているんだ。今でも彼がBerghainでプレイする時は出来るだけ顔を出そうとしているよ。踊ったり、新しいアイディアを得たりするのさ。