My Favourite DJはResident Advisorの連載企画で、そのコンセプトは「自分の好きなDJについてDJに語ってもらう」というシンプルなもの。新しい才能、ビッグネーム、ローカルDJなど、どんなDJでも構わないというオープンなスタイルを設け、彼らから幅広い回答を得ようとする企画となっている。

Claude VonStroke: The Gaslamp Killerの狂気的なエネルギーが好き

期待はずれの答えかもしれないけど、ここ5年くらいで俺が1番衝撃を受けた人物はThe “Motherfucking” Gaslamp Killerだ。彼はものすごいエネルギーの持ち主だよ。相手を突き刺すようなあの瞳の奥は、これから彼がハグしてくるのか、それとも顔面にパンチを入れてくるのか全然読めない。そのエネルギーは、彼のDJセットにそのまま表れている。俺が初めて聴いた時、彼は'80s/'90sヒップホップのセットをプレイしていたんだけど、それを聴いていたJustin Martinが500ドルのサングラスを外して床に投げつけ、踏みつぶしたんだ。ありゃ最高だったよ。それ以来、俺はフェスティバルに行っては彼を探し、彼がEprom的なフューチャー・ヒップホップやJimi Hendrix、さらに“ダースベーダーのテーマ”や、今まで聴いた事もないくらいダークでジットリとしたビートをプレイするのを聴いてきた。でも、プログラミングはさておき、何と言っても素晴らしいのは彼の魅せ方だ。

彼は、自分の声を使ってちょっとしたライブ・ブリップやスタブを行い、ビートの中に溶け込ませるんだ、まるでJames Brownのようにね。自分がその時鳴らしているビートについての小ネタも披露したりするんだけど、それも全部音楽の中に収まるような、言葉の断片で話すんだよ。うまく説明できないけどとにかく素晴らしいんだ、音楽に被せてずっと喋っているようなMCとは全然違う。あと、彼は常に体を動かしている。あの大きなヘアスタイル（とヒゲ）を振り乱したり、ステージの端から端までビートに合わせて移動したり。俺が今まで聴いた中で最もクレイジーな音楽をプレイしながら、そんなことをやってるのさ。彼はワイルドでサイケデリックなテイストを持った本物のパフォーマーで、唯一無二の存在だ。ちなみに、俺の中の一番の思い出は、俺が彼にあるトラックのタイトルを聞いた時、彼は全く違った曲名を答えたこと。俺に教えたくなかったのか単に間違っただけなのか分からないけど、おかげでだいぶ苦労させられたよ。ある意味リスペクトさ（彼がかけてた曲を見つけるのに半年くらいかかったかな）。それは最高のクラシックDJトラックだったぜ！

Éclair Fifi: Sergeの妥協のない姿勢に影響を受けた

この質問に対する答えは簡単よ。わたしのブッキングが増え始めて、より積極的にレコードを掘り、テクノやヒップホップ（始めの頃はそればかり買ってたの）以外のジャンルにも注目し始めた頃のことを思い出せば、自ずと答えが出てくるわ。わたしが大好きな曲や、今まで知らなかった音楽をプレイしてワクワクさせ、ショウの後のわたしを、家に走りその音楽が何だったのかを調べたい気分にさせたのは誰だったか？

それはSergeしかいないわ。彼は単に、わたしが大好きなレーベルの1つを立ち上げただけじゃない。彼のセットにはイタロディスコやゲットーテック、エレクトロ、シカゴハウス、デトロイト・テクノ、Drexciyaなんかが含まれていたし、今もそれは同じ。このインタビューを受けるまで考えたこともなかったけど、わたしのDJを聴いたことがある人ならわかると思うわ。実はわたしも彼と似たような音楽をプレイしているのよ。彼の、自分が好きな音楽をプレイするっていう姿勢が大好きだし、そのロジックにわたしは影響を受けたんでしょうね。彼のミックススタイルがどんなものか、今すぐに思い出すことはできないわ（素晴らしいってことに間違いないけど）。だって、いつもそんなの気にしている暇もないくらい踊りまくってるから。彼のプレイを聴き始めてからもう何年も経つけど、わたしがどんな気分であろうと、彼には毎回踊らされちゃうのよね。

Robert Dietz: Eddie Fowlkesのプレイを聴くと無言になる

ここ数年間で、新しいDJを見つけるのがどんどん難しくなってきているよ、僕自身がまだまだこれからだしね。でも、僕の心をガッチリと掴んだDJが1人だけいるんだ。ロンドンで一緒にプレイしたことがある、Eddie "Flashin" Fowlkesさ。彼はデトロイトテクノのパイオニアの1人だけど、もっと評価されるべき人物だと思っている。彼がステージに立った時、そこにいた僕たちはみんな無言になってしまった。あれほど暖かくセクシー、かつパワフルなテクノセットは久々に聴いたよ。本領を発揮した彼は、下手な小細工をすることなく、じっくりピークタイムへと持っていった。その場にいた全員が彼の虜にされてたよ、特に女の子達はね。

その後僕は、彼がイビサのホテルUshuaiaで開催されたUsed + Abusedのパーティーに出演した時に聴きに行ったり、2ヶ月前にはベルリンのレコードショップでのBoiler Roomセッションで彼がプレイしている時に会いに行ったりした。その時も、僕はまた無言になってしまったよ。彼のセットはソウルとエネルギーに満ち溢れていている。ミックスの完ぺきさは、言うまでもないよね。

FaltyDL: 常にDave Qの完ぺきなテイストを追いかけている

僕にとってのMy Favourite DJは、ニューヨークのDave Qだ。何故彼がお気に入りなのかというと、僕は彼のプレイする音楽が、最初に聴いた時は大体嫌いなんだけど、その後それが良い曲だって事に気付いて、結局半年間ノンストップで聴き続けることになるって自分で分かっているからさ。つまり彼は、流行の仕掛人DJなんだ。でも、彼自身にその自覚はない。彼がNYCで初めて主催したパーティーは、今や伝説となっている。いや、Dub Warは、スタートしたその日から既に伝説だったんだ。僕はいつも早い時間から行って彼のDJを聴いていたよ、しかも壁にベッタリと引っ付いて、他の人達の会話に引きずり込まれないようにしてた。彼は大抵22時くらいから始め、いつも本気のプレイをしていたよ。

僕は、映画や洋服、音楽など、あらゆるアートフォームに対する彼のセンスに夢中なんだ。そしてやっぱり半年後には、僕は頭のてっぺんから足の爪先まで彼の真似をする。ちょっと大げさだけど、半分くらいは事実だよ。彼のテイストは、僕にドンピシャなのさ。とにかく、例えば彼が僕の新曲や、僕の新しい靴を褒めてくれたとしたら、その言葉には色んな意味が含まれているってことだ。そして僕はただ頷く。彼は、曲をかける前や何かコメントする前に、少し考えるそうだ。想像できるか？もし彼の日中の仕事を知っていたら、この男についてより理解できるのかもしれないね。

もともと気無性な僕は、僕自身が自ら作った曲としっかりと向き合えるようになるまで、彼にその曲を聴かせないことがあるんだ。何故なら彼は僕とは完全に違ったアングルから見て、僕にその本質を明かしてしまうから。本当にクリエイター気質だよ！それは彼のDJにもしっかりと現れている。スタイルや流れ、そしてあの荒々しさにね。

Slackk: Spookyの勤勉な職業観と猛烈なミキシングを尊敬している

最高のDJである証は、自分がそのDJを見たり聴いたりした時、もっと見たい聴きたいと思うかどうか。もしくは、自分のムードによっては、畏敬の念を持つかどうかだと俺は思っている。今までラジオやクラブで数えきれないほどSpookyと一緒にプレイしてきたけど、ものの2、3分間で5、6曲をササッとミックスしてしまうアイツのスキルは恐ろしいもんだぜ。奴がプレイした後、ヘトヘトに疲れてダンスフロアを離れるお客さんを何人も見たことがある。いやぁ、あれは最高だよ。

それと、彼の職業観も尊敬してるんだ。今になっては皆知ってて当たり前だけど、ロンドンには素晴らしい海賊ラジオカルチャーが根付いている。Spookyは今の時代にそのカルチャーを体現している数少ないDJだと思うし、彼はラジオでプレイすることをすごく大事なものとして捉えている。Spookyが午前2時の番組を担当しているのも、街中でレコードバッグを引きずりながら歩いているのも、全てはラジオでのセットに対する愛があるからこそできることなんだ。月曜日には6時間のヤバいマラソンセットだってプレイする。やらない理由なんてないからね。本当に素晴らしいことだ、彼の情熱を尊敬するよ。いくらブッキングが増えようと、彼のそういった面は全く変わっていない。

正直、彼の後にプレイするのはあまり好きじゃないんだけど、とてもやりがいのある仕事だとは思っているよ。

Ryan Elliott: Jeff Millsのようにフロアを操る人は他にはいない

僕のお気に入りのDJは、言わずもがな、いつだってJeff Millsさ。Jeffのパフォーマンスを長年、あらゆる土地とヴェニューで聴いてきたけど、ガッカリしたことは一度もない。僕にとって素晴らしいDJとは、その人がプレイを始めると同時に、フロアのエネルギーや雰囲気が良い方向に変わるようなDJだ。

僕は今まで、Jeffのようにフロアを操るDJを他に見た事がない。いつだったか、彼のセットを聴いていた時、数時間ずっと釘付けにされたことがあったよ。Jeffはリスクを恐れない。それはDJにとってとても重要なことだと僕は思っている。それと、僕は彼がブースに立った時の、別世界からやって来た人のような存在感が好きなんだ。彼の宇宙への情熱は、彼のセット全体とうまくマッチしているし、何と言っても彼はユニークだ。90年代のデトロイトのウェアハウスで3台のターンテーブルと909を使用したセットや、Sonar By Dayで太陽の下ビールを飲みながら聴くWizard名義のセット。僕はいつでもどこでも、Jeff MillsのDJで踊りたいね。